2009年 04月 16日
歌舞伎座 四月大歌舞伎 |
歌舞伎座 四月大歌舞伎 を見てきました。
今月も昼夜通しの強行観劇です。
昼の部 通し狂言 伽羅先代萩 めいぼくせんだいはぎ
白状しますと、あんまり好きな演目ではないので、演目が発表になったときには、う~、と思ったのですが、配役を見て、見ずばなるまい、と思いました。だって、乳人政岡が玉三郎さん、八潮が仁左衛門さんなんだもん。
出演は他に、沖の井を福助さん、松島が孝太郎さん、吉右衛門さんの仁木弾正に、荒獅子男之助は三津五郎さん、足利頼兼を橋之助さん、絹川谷蔵と渡辺民部を染五郎さん。仁左衛門さんは細川勝元もお勤めです。
まず、「花水橋」。
伽羅の銘木で作らせた下駄を履いて、廓通いの奥州の大名足利頼兼。(だから伽羅と書いてめいぼくと読ませる外題がついているんですねぇ。知らなかった……)。このダメ殿様が御家騒動の原因になるんだけど、ダメ殿にはとても見えない橋之助さんの男っぷり。染五郎さんの力士っぷりも凛々しかったなぁ。
お次は「竹の間」と「御殿」。
ここは女たちの政治の世界。玉三郎さんの政岡を見て、政岡像がちょっと変わりました。
政岡といえば、「吉野川」の定高と並ぶ女丈夫。母だからこその強い女の象徴のような役所なのだけど、玉三郎さんの政岡は、愛ゆえの強さなんだな、というところが、ヒシヒシと伝わってきました。守るべき鶴千代への愛と、わが子千松への愛。言いつけを守って、幼いながらに我が身を省みずに、鶴千代への忠義を果たして死んでいく千松。その千松の心情が痛いほど分かっているから、わが子の死に際にも、凛と強い政岡。きっと、ここで取り乱したら、千松に対して申し訳がたたないと思っていたのではないかな?
これまで見た、誰の政岡よりも、愛を感じる政岡でした。
で、仁左衛門さんの八潮。当たり役なのは知っていたけど、拝見するのは初めて。これがまた、ホンッとに素敵!(という言葉は当たらないか……)。憎々しい意地悪婆なのに、節々に愛嬌のある、憎みきれないクソババアでした(暴言多謝)。
「床下」
吉右衛門さんの弾正の凛々しいこと! とっても鼠に化けていたとは思えない、大人物っぷりでした。
そして「対決」「刃傷」
こっちは男の政治の世界ですね。裃長袴姿の細川勝元の仁左衛門さん。さっきまでの八潮とは別人ないい男っぷりです。大岡越前ばりの名裁きが心地よかったこと。
夜の部 彦山権現誓助剱ひこさんごんげんちかいのすけだち 毛谷村
吉右衛門さんの毛谷村六助に、福助さんのお園。
ほのぼのと茶目っ気たっぷりな吉右衛門さんの六助と、凛々しい男装から、女の恥じらいを十二分に表現する福助さんのお園。あり得ないでしょ、というストーリーなんだけど、なんだか引き込まれてしまう、いい後味な一幕でした。
廓文章 吉田屋
仁左衛門さんの伊左衛門に、玉三郎さんの夕霧。よッ! 待ってましたッ!の一幕です。
仁左衛門さんの伊左衛門、まあ、ダメダメ甘甘な若旦那なんだけど、そこは育ちのよさと可愛らしさがにじみ出て……。もおおおぉ、素敵な伊左衛門です。文句ないです。はい。
玉三郎さんの夕霧。ホンッとにきれいです。『すべては舞台の美のために』の中でも紹介されていた、今回新調の打掛も美しいこと! 打掛に「おお」というどよめきと拍手が、2回起こりました。でも、その打掛に全然負けてない、豪華絢爛な打掛が、単なる引き立て役に見えてしまう玉三郎さんの美しさ。驚愕ものです。
吉田屋喜左衛門は我當さん、吉田屋女房おきさは秀太郎さん。松島屋兄弟3人で進む舞台が、なんか感慨深かったなぁ。きっと十三代目さんも喜んでいらっしゃることでしょう。
曽根崎心中
天満屋お初はもちろん藤十郎さん、平野屋徳兵衛は翫雀さん。
曽根崎心中といえば、扇雀時代の藤十郎さんをスターに押し上げ、以来、半世紀以上も藤十郎さんが演じ続けている当たり役。で、80歳を過ぎた藤十郎さんの初々しくも若々しいこと。
「あの場面が大好きです」とご本人に力説したあの場面、お初の足を床下の徳兵衛がかき抱くあのシーンが、やっぱり胸に迫りました。
「この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、夢の夢こそあはれなれ。あれ数ふれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め、寂滅為楽と響くなりー」。道行の有名なこの一節。実は学生時代、近松命の教授に丸暗記させられました。10代の頃に憶えたものって、忘れないのね。この一節の傑作ぶりに改めて感心しきりな気分になりました。
それにしても……。
義太夫もの3本立て。ちょっと重いんじゃないの?と思っていたのだけど、それぞれ味わいの違う3本で、まったく飽きることなく、面白い構成でした。
今月も昼夜通しの強行観劇です。
昼の部 通し狂言 伽羅先代萩 めいぼくせんだいはぎ
白状しますと、あんまり好きな演目ではないので、演目が発表になったときには、う~、と思ったのですが、配役を見て、見ずばなるまい、と思いました。だって、乳人政岡が玉三郎さん、八潮が仁左衛門さんなんだもん。
出演は他に、沖の井を福助さん、松島が孝太郎さん、吉右衛門さんの仁木弾正に、荒獅子男之助は三津五郎さん、足利頼兼を橋之助さん、絹川谷蔵と渡辺民部を染五郎さん。仁左衛門さんは細川勝元もお勤めです。
まず、「花水橋」。
伽羅の銘木で作らせた下駄を履いて、廓通いの奥州の大名足利頼兼。(だから伽羅と書いてめいぼくと読ませる外題がついているんですねぇ。知らなかった……)。このダメ殿様が御家騒動の原因になるんだけど、ダメ殿にはとても見えない橋之助さんの男っぷり。染五郎さんの力士っぷりも凛々しかったなぁ。
お次は「竹の間」と「御殿」。
ここは女たちの政治の世界。玉三郎さんの政岡を見て、政岡像がちょっと変わりました。
政岡といえば、「吉野川」の定高と並ぶ女丈夫。母だからこその強い女の象徴のような役所なのだけど、玉三郎さんの政岡は、愛ゆえの強さなんだな、というところが、ヒシヒシと伝わってきました。守るべき鶴千代への愛と、わが子千松への愛。言いつけを守って、幼いながらに我が身を省みずに、鶴千代への忠義を果たして死んでいく千松。その千松の心情が痛いほど分かっているから、わが子の死に際にも、凛と強い政岡。きっと、ここで取り乱したら、千松に対して申し訳がたたないと思っていたのではないかな?
これまで見た、誰の政岡よりも、愛を感じる政岡でした。
で、仁左衛門さんの八潮。当たり役なのは知っていたけど、拝見するのは初めて。これがまた、ホンッとに素敵!(という言葉は当たらないか……)。憎々しい意地悪婆なのに、節々に愛嬌のある、憎みきれないクソババアでした(暴言多謝)。
「床下」
吉右衛門さんの弾正の凛々しいこと! とっても鼠に化けていたとは思えない、大人物っぷりでした。
そして「対決」「刃傷」
こっちは男の政治の世界ですね。裃長袴姿の細川勝元の仁左衛門さん。さっきまでの八潮とは別人ないい男っぷりです。大岡越前ばりの名裁きが心地よかったこと。
夜の部 彦山権現誓助剱ひこさんごんげんちかいのすけだち 毛谷村
吉右衛門さんの毛谷村六助に、福助さんのお園。
ほのぼのと茶目っ気たっぷりな吉右衛門さんの六助と、凛々しい男装から、女の恥じらいを十二分に表現する福助さんのお園。あり得ないでしょ、というストーリーなんだけど、なんだか引き込まれてしまう、いい後味な一幕でした。
廓文章 吉田屋
仁左衛門さんの伊左衛門に、玉三郎さんの夕霧。よッ! 待ってましたッ!の一幕です。
仁左衛門さんの伊左衛門、まあ、ダメダメ甘甘な若旦那なんだけど、そこは育ちのよさと可愛らしさがにじみ出て……。もおおおぉ、素敵な伊左衛門です。文句ないです。はい。
玉三郎さんの夕霧。ホンッとにきれいです。『すべては舞台の美のために』の中でも紹介されていた、今回新調の打掛も美しいこと! 打掛に「おお」というどよめきと拍手が、2回起こりました。でも、その打掛に全然負けてない、豪華絢爛な打掛が、単なる引き立て役に見えてしまう玉三郎さんの美しさ。驚愕ものです。
吉田屋喜左衛門は我當さん、吉田屋女房おきさは秀太郎さん。松島屋兄弟3人で進む舞台が、なんか感慨深かったなぁ。きっと十三代目さんも喜んでいらっしゃることでしょう。
曽根崎心中
天満屋お初はもちろん藤十郎さん、平野屋徳兵衛は翫雀さん。
曽根崎心中といえば、扇雀時代の藤十郎さんをスターに押し上げ、以来、半世紀以上も藤十郎さんが演じ続けている当たり役。で、80歳を過ぎた藤十郎さんの初々しくも若々しいこと。
「あの場面が大好きです」とご本人に力説したあの場面、お初の足を床下の徳兵衛がかき抱くあのシーンが、やっぱり胸に迫りました。
「この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、夢の夢こそあはれなれ。あれ数ふれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め、寂滅為楽と響くなりー」。道行の有名なこの一節。実は学生時代、近松命の教授に丸暗記させられました。10代の頃に憶えたものって、忘れないのね。この一節の傑作ぶりに改めて感心しきりな気分になりました。
それにしても……。
義太夫もの3本立て。ちょっと重いんじゃないの?と思っていたのだけど、それぞれ味わいの違う3本で、まったく飽きることなく、面白い構成でした。
by chiharu-N413
| 2009-04-16 23:43
| 歌舞伎