2009年 06月 17日
女殺と初舞台。六月大歌舞伎 |
女殺油地獄 おんなごろしあぶらのじごく
片岡仁左衛門 一世一代にて相勤め申し候
河内屋与兵衛はもちろん仁左衛門さん、豊嶋屋お吉を孝太郎さん、父徳兵衛は歌六さん、芸者小菊と母おさわは秀太郎さん。娘お光で千之助くんも出てます。
仁左衛門さんが20歳の時に初めて演じて以来の、当たり役であり、仁左衛門さん(当時は孝夫さん)の出世作でもある女殺。「若さが必要な役だから」と、ご本人はもう演じないと公言なさっていた役です。どうやら本当に、「歌舞伎座さよなら公演だから」と、松竹が口説いてくれたらしい。感謝!
女殺を生で見たのは、前に一度だけ。獅童さんが三越劇場で演じた時でした。
その時は、1幕と2幕と3幕と、与兵衛が3人いるようで……。同じ人物がなんで場面が変わると違う人になっちゃうの? わけのわかんない話だ、という印象だったのだけど、今回、仁左衛門さんの舞台を見て、与兵衛は一人なんだと実感できました。
ちょっとだけ(ホントにちょっとだけです)複雑な家庭の事情で、わがまま放題育った甘々なお坊ちゃんで、悪いことは全部人のせいにしてひがんじゃう。借金のドツボにはまって、気が弱いくせに、自分のことしか考えずに、親に暴力をふるったり、人を殺したりしちゃう。こんなヤツ、現在の世の中にもたくさんいそう。というよりも、江戸時代よりも、現在の方がたくさんいるのかも。
殺しの場面。最初は弱虫ゆえの狂気、次第に殺しを楽しんで、最後はおびえて逃げていく。与兵衛の心境の変化が、ヒシヒシと伝わってきました。
油にまみれて、刀を振り上げて、刀にギラリと反射した光が顔を照らしながら笑う与兵衛の凄惨な顔が瞼に焼きついてます。鳥肌ものでした。
これで見納めなんですね。ああ、寂しい……。
昼の部は他に、
松緑さんと魁春さんの 正札附根元草摺 と、福助さん、梅玉さんによる 蝶の道行 の舞踊2つ。
そして、幸四郎さん、吉右衛門さん、染五郎さんの 角力場。
威風堂々とした濡髪長五郎の幸四郎さんと、若々しくも瑞々しい放駒長吉の吉右衛門さんの対比がたっぷり楽しめるご馳走の一幕。つっころばしの染五郎さんも素敵でした♪
門出祝寿連獅子 かどんでいおうことぶきれんじし
四代目 松本金太郎 初舞台
童後に孫獅子の精が、四代目金太郎を襲名した染五郎さんの長男、斎くん、4歳。右近後に仔獅子の精は染五郎さん、左近後に親獅子の精は幸四郎さん。芝雀さん、福助さん、松緑さん、魁春さん、梅玉さん、そして吉右衛門さんも参加して、劇中に口上もあるおめでたい一幕。
いやいや、びっくりしました。金太郎くん。立派に踊りもこなしています。毛振りだって、一生懸命に、立派にこなして、高麗屋三代そろった獅子が圧巻でもあり、若干4歳にして健気に舞台を勤める金太郎くんの姿についウルウルしてしまいました。
ちなみに、上の写真の右側は、金太郎初めてのサインだそう。
そして
極付 幡随長兵衛
幡随院長兵衛は吉右衛門さん、水野十郎左衛門は仁左衛門さん、女房お時は芝翫さん、長兵衛の古文たちに染五郎さん、松緑さん、松江さん、男女蔵さん、亀寿さん、亀鶴さん、種太郎くん。倅長松には玉太郎くん。水野の腰元役で芝のぶちゃんもご出演です♪
吉右衛門さんの幡随長兵衛が、ほれぼれとする親分っぷりです。
この話って、町奴と旗本奴の対立がテーマなんですね。任侠な雰囲気いっぱいの町奴はともかく、不良旗本のはずの旗本奴たちが、立派な武士にしか見えないのが、少々気になったのだけど、そもそもそういう原作なのか……?
最後は、幸四郎さんの髪結新三。
……なのだけど、前に見たときのがっかり感が強すぎて、見ずに帰ってしまいました。1日居続けは体力的に結構辛くて……。
よく見ている歌舞伎ツウのブログなどを見る限り、見なくてよかったのかも……。
ところで、今月の歌舞伎座。
門出祝寿連獅子では、幸四郎さん、染五郎さん、金太郎くんの高麗屋三代。
女殺油地獄では、仁左衛門さん、孝太郎さん、千之助くんの松島屋三代。
幡随長兵衛には、芝翫さん、福助さん、児太郎くんの成駒屋三代がご出演。
なんだか感慨深いものがありました。
by chiharu-N413
| 2009-06-17 10:39
| 歌舞伎